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予算20万円でオフィスITを揃える3つの方法——Orcinus・NAS・クラウド、コストと運用を徹底比較 Thumbnail

予算20万円でオフィスITを揃える3つの方法——Orcinus・NAS・クラウド、コストと運用を徹底比較

予算20万円でオフィスITを揃える3つの方法——Orcinus・NAS・クラウド、コストと運用を徹底比較

「会社を立ち上げたばかりで、ITツールにあまりお金をかけられない」「でも従業員が増えてきて、そろそろちゃんとした環境が必要」——そんなタイミングで浮上するのが、予算20万円前後でオフィスITをどう整備するかという問題です。

チャット、ファイル共有、会計、プロジェクト管理……必要なものを個別に揃えようとすると、あっという間にコストが膨らみます。かといって何も整備しないままでは、業務効率は上がらず、セキュリティリスクも放置することになります。

本記事では、約20万円の予算を想定し、①オールインワンサーバー型、②NAS(ネットワークHDD)型、③クラウドSaaS型の3つの選択肢を、実際の使い方とトータルコストで比較します。ITに詳しくない経営者や総務担当者の方にも、判断基準が明確になるよう整理しました。


前提:20万円という予算の現実

まず、私たちが「20万円」と聞いてイメージすべきは、初期投資(ハードウェア+導入費)の話であることです。その後のランニングコスト(月額費・サポート費)は別途発生します。

以下が、2026年7月時点での各選択肢の概算です。

選択肢 初期費用(目安) 月額費用(目安) 3年トータル
Orcinus 220,000円 5,500円(※1) 418,000円
NAS(Synology)+自作 約170,000円 0〜3,000円(※2) 約170,000〜278,000円
クラウドSaaS(個別契約) 0円 約19,450円(※3) 約700,200円

※1: Orcinusはキャンペーン価格。通常は11,000円/月。
※2: 電気代・ドメイン代などを想定。保守を外部委託する場合は別途費用。
※3: 5人規模の試算。対象は会計ソフト(freee標準プラン5,480円)、ファイル共有(DropBox Business 1,500円/人)、チャット(Slack Pro 700円/人)、プロジェクト管理(Asana Premium 2,970円)。

この表だけ見ると「NASが一番安い」という結論になります。ただし、この数字には「運用の手間」と「カバーできる機能の範囲」が含まれていません。ここからが本題です。


選択肢①:Orcinus——「届いてすぐ全部使える」オールインワン型

Orcinusは、BeesNest LLC が提供するオールインワン小型サーバーです。本体価格220,000円(税込)に加え、月額5,500円のサポートプラン(キャンペーン価格)で運用します。

何ができるのか

箱から出して電源とLANケーブルを繋ぎ、ブラウザでアクセスするだけで、以下の機能がすべて使えます。

  • ビジネスチャット(Mattermost) — Slack互換のUI。ユーザー数無制限、過去ログも無制限。
  • ファイル共有(Samba+WebUI) — Windowsエクスプローラーから直接アクセス可能。大容量ファイルも社内LANで高速転送。
  • 会計ソフト(Hieronymus) — 自社製の会計システム。証憑(領収書)の登録機能と電帳法対応を備える。
  • プロジェクト管理 — タスク管理や進捗共有も同一画面上で。

実際の使い方

Orcinusの特徴は、「設定」という概念が極限まで削ぎ落とされている点です。例えばチャットを始める場合、管理者がMattermostアプリをストアから「ワンクリック」でインストールし、社員のアカウントを発行するだけ。ファイル共有もSambaの共有フォルダをブラウザ上で作成し、社内のPCから\\orcinus\shared のようにアクセスします。

ITに詳しい人が社内にいなくても、本体のセットアップガイドに沿えば30分程度で運用開始できます。サポートプランに加入すれば、遠隔での設定代行やトラブル対応も受けられるため、情シス不在のオフィスには最も現実的な選択肢です。

向いている企業

  • 専任のIT担当者がいない(または兼務)
  • 機能ごとにバラバラのサービスを管理するのが面倒
  • 固定費(月額)をできるだけ抑えたい
  • データを自社管理したい(クラウドに預けたくない)

Orcinusの詳細は公式サイトをご覧ください。


選択肢②:NAS(Synology DS923+)——「自分で作る」自由度重視型

NAS(Network Attached Storage)は、本来はファイルサーバーですが、近年の製品はアプリストアを通じて様々な機能を追加できます。代表格がSynologyのDiskStationシリーズです。

何ができるのか

SynologyのOS「DSM(DiskStation Manager)」には、公式・サードパーティ製のアプリが多数用意されています。

  • ファイル共有(Synology Drive / SMB) — クラウドストレージ的な使い方も、Windows共有フォルダも可能。
  • チャット(Synology Chat) — 自社内だけで完結するチャット。ただし機能はMattermostほどリッチではない。
  • バックアップ — PCやサーバーのバックアップ先としても活用可能。
  • メディアサーバー・監視カメラ管理 — オプション的な機能も豊富。

実際の使い方

例えばSynology DS923+(Amazonで価格を確認)は4ベイモデルで、価格は本体約11〜13万円。これにIronWolf 4TB(NAS用HDD、Amazonで確認)を2〜4本搭載すると、合計で16〜20万円程度になります。

DSMのインストールは直感的で、Webブラウザからアクセスしてウィザードに従うだけ。アプリの追加も「パッケージセンター」から選んでクリックする方式で、Orcinusと同様のワンクリック体験です。

ただし、会計ソフトに相当する機能は標準では提供されておらず、別途クラウドの会計サービス(freeeや弥生会計など)と連携する必要があります。また、Synology Chatはあくまで簡易的なチャットであり、SlackやMattermostのような本格的なチームコミュニケーションには物足りなさを感じるかもしれません。

向いている企業

  • 社内にある程度のITリテラシーを持つ人がいる
  • ファイル共有・バックアップが主目的で、チャットや会計は別の方法でカバーする
  • 月額コストを極限まで下げたい(初期投資で回収する)
  • カスタマイズ性を重視する

選択肢③:クラウドSaaS——「月額払いで最新機能」従量課金型

「今や会社のITはクラウドで十分」という意見も確かに一理あります。Google WorkspaceやMicrosoft 365に加え、freee(会計)、Slack(チャット)、Dropbox(ファイル共有)を組み合わせれば、確かに機能的には不足しません。

何ができるのか

  • ファイル共有: Google Drive / OneDrive / Dropbox — どこからでもアクセス可能。
  • チャット: Slack / Google Chat — 外部連携がしやすく、豊富なインテグレーション。
  • 会計: freee / 弥生会計(クラウド版) — 銀行API連携や自動仕訳で効率化。
  • プロジェクト管理: Asana / Notion / Trello — 柔軟なタスク管理。

実際の使い方

クラウドSaaSの最大のメリットは「初期投資ゼロ」で始められることです。例えばGoogle Workspace Business Starterは1ユーザー月額680円から。Slackのフリープランも小規模なら十分使えます。

ただし、5人規模で試算した月額約19,450円という数字は、決して小さくありません。これを3年間(36ヶ月)支払い続けると約70万円。さらに従業員が増えれば、その分だけ費用は比例して増加します。

向いている企業

  • 初期投資を極力抑えたい(創業直後など)
  • テレワーク・リモートワークが中心で、社内LANの価値が低い
  • 各サービスの「最新機能」を常に使いたい
  • 毎月の変動費としてITコストを管理したい

比較まとめ:3軸で判断する

3つの選択肢を整理すると、以下の3つの軸で判断するのが合理的です。

判断軸 Orcinus NAS自作 クラウドSaaS
運用の手間 最小(サポートあり) 中(自分で管理) 小(各社に任せる)
3年トータルコスト 約42万円 約17〜28万円 約70万円
機能の網羅性 ◎ 全部入り △ ファイル中心、会計は別途 〇 組合せ次第
データの自社管理 ◎ 自社サーバー内 ◎ 自社NAS内 × 各社クラウド上

結局、どれを選ぶべきか

私のスタンスを明確にしておくと——ITにリソースを割けない中小企業には、Orcinusが最もバランスの取れた選択肢だと評価します。

その理由は単純で、「月額5,500円というサポート費用で、IT管理のまるごと外注化」が成立するからです。本体220,000円は確かに安くはありませんが、3年トータルで見ればクラウドSaaSの約半分。しかも、チャット、ファイル共有、会計、プロジェクト管理が全部入りで、追加契約の手間が一切ありません。

NAS(Synology)は確かにランニングコストを抑えられますが、会計ソフトの扱いやセキュリティアップデートの管理など、結局誰かが面倒を見る必要があります。その「誰か」を社内で確保できるなら良い選択肢ですが、多くの中小企業ではその「誰か」が経営者自身だったりするわけです。

クラウドSaaSは初期コストがゼロで始められる魅力がありますが、毎月の支払いは確実に会社のキャッシュフローを圧迫します。特に「1ユーザーあたり〇円」の課金体系は、従業員が増えるほど指数関数的にコストが増えることに注意が必要です。

とはいえ、リモートワーク中心のチームや、すでに特定のクラウドサービスに深く依存している組織は、現状維持(クラウドSaaS)の方が移行コストを考えれば合理的な場合もあります。大切なのは、「何を基準に選ぶか」を明確にすることです。


付録:導入時のチェックリスト

どの選択肢を選ぶにしても、以下のポイントは事前に確認しておくことをお勧めします。

  • ☐ 社内のインターネット回線は十分な速度が出ているか(目安:上り30Mbps以上)
  • ☐ 現在使っているクラウドサービスの契約期間・解約条件を確認したか
  • ☐ データ移行(特にメールとファイル)の計画は立てているか
  • ☐ 従業員のITリテラシーレベルを把握しているか
  • ☐ 将来的な従業員数の増加を見越したスケーラビリティを考慮しているか

情シス代わりになるサーバー、あります。

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